ムーミンの名誉のために

ムーミンはカバではない

と、何度訂正しても、間違った定説が世間に流布しているが、

もう一度言う。

ムーミンはカバではない。
ムーミンである。
正確に言うと、ムーミントロール。妖精の一種と言ったらよろしかろうか。

妖精といって、ティンカー・ベルみたいなのを想像されても、
またちょっと趣が違うのだが、とりあえず、カバでだけはない、
と、声を大にして申し上げる。

カバといったら、あれだ。

小学生の頃、大阪の天王寺動物園に連れられて行ったときのことだ。

もちろんそこに、カバもいた。

カバはデカくてのんきそうで、こっちにケツを向けてもぐもぐエサを
食っている様子も、微笑ましく見えたものだ。

「わー。カバだよ」

という、周りの他の家族連れも、和気藹々としたものだった。

だが、

こっちにケツを向けて

というあたりに、すでに、伏線は敷かれていた。

こっちにケツを向けて

あいつは

　・
　・
　・
　・
　・

それは

あたかも

茶色のスプリンクラー

であった。

「ぎゃー！！」

一目散に、四方八方に逃げ惑う、各家族。

蜂の巣をつついたよう

という言葉が、あれほどぴったりな場面に、他に出会ったことがない。

もう一度繰り返す。

ムーミンはカバではない。

断じて。

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